京文連総会で講演しました

国宝阿弥陀二十五菩薩来迎図のために調製した表装裂地(講演資料より)

 令和5年7月19日(水)に知恩院和順会館において開催された京都府文化財所有者等連絡協議会(京文連)の総会で、「知恩院蔵国宝阿弥陀二十五菩薩来迎図の修理について」と題し、約1時間、講演する機会を頂戴しました。

 国宝阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)は、阿弥陀如来が諸菩薩と共に、往生を願う臨終の念仏者の元へ飛来する様子が描かれたもので、鎌倉時代の仏教絵画の傑作として歴史の教科書等にも登場する著名な絵画です。昭和9年(1934)に旧国宝保存法のもとで修理が行われて以来、85年が経過し、損傷の進行が懸念されていたことから、平成31年度より3ヶ年をかけて国庫補助及び「日本美を守り伝える『紡ぐプロジェクト』ー皇室の至宝・国宝プロジェクト」による文化財修理事業第1号として、弊社において修理施工を行いました。

 講演では、所有者である総本山知恩院様のご理解のもと、修理前調査から竣工までの一連の工程について、写真を中心に詳細を説明し、あわせて目的別の裏打紙や刷毛、表装裂地、金工品など、修理に必要な道具、材料についても紹介しました。

 京文連は、京都府内で国宝・重要文化財をはじめとする指定文化財等を所有しておられる社寺、法人等から構成される協議会で、当日のご参加者からは、具体的な修理の内容を詳らかに承知していなかったが、興味深い話が聞けた、というお声を多数頂戴しました。特に、修理に時間と経費がかかる理由、伝統材料の維持・継承の困難さについては反響が大きく、今回の講演を契機に、美術工芸品分野の文化財修理についてご関心をお寄せいただけたことは幸いです。

 このような貴重な機会を頂戴いたしましたことに、厚く御礼申し上げます。

(代表取締役 大菅)