令和2年 新年のご挨拶

 あけましておめでとうございます。

 地域振興への文化財の活用を制度化した改正文化財保護法が施行された昨年は、さながら「文化財活用元年」となりました。文化財は等しくかけがえのないものばかりである一方、態様はさまざまであるため、個々の文化財の特性に留意しない画一的な活用策により、文化財の価値に優劣が生じたり、摩耗・滅失の助長につながったりすることは決してあってはなりませんが、法の後押しにより「地域の宝」への社会的関心が高まり、裾野の広い文化財の維持・継承につながることを期待しております。

 近年、文化財の修理に焦点を当てた展覧会やフォーラムなどが数多く開催されています。特に昨年は、展覧会「住友財団修復助成30年記念『文化財よ、永遠に』」や、文化庁・宮内庁・読売新聞社による「紡ぐプロジェクト」などにおいて、修理技術や伝統材料を広く紹介いただく機会が増え、文化財修理を「なんとなく大変そうな仕事」と思っておられた方々に「本当に大変な仕事」であると知っていただけるようになりました。

 文化財修理は、多くの場合公的資金の補助によるところが大きいですが、その財源の先細りは事業量の減少に直結し、技術継承のための専門人材の継続的な育成、伝統材料の生産・供給の維持をますます困難なものにしています。今般の法改正によっても直ちに解決できる問題ではありませんが、長期的には、継続的な情報発信を通じ、幅広い層に文化財修理に興味を持っていただくことに尽きるのではないかと思慮いたします。

 今後とも、日々の業務に邁進いたしますとともに、文化財修理に関する社会的関心の向上に資するため、種々努力してまいる所存です。本年もご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

令和2年1月1日

株式会社光影堂 代表取締役
一般社団法人伝統技術伝承者協会 総務担当理事
大菅 直


【ご参考】

文化財保護法及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律等について(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/1402097.html

住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」(住友グループ広報委員会)
https://www.sumitomo.gr.jp/history/related/senoku/rs30thaniv.html

「紡ぐプロジェクト」修理
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/restore/